水道業者が語るトイレ異音の診断ポイント
長年、水道修理の仕事に携わっていると、「トイレからブーンという音がする」というご相談を数多く受けます。私たちプロが現場に到着して、まず行うのは丁寧な問診と観察です。お客様がどのタイミングで音に気づき、どんな時に音が大きくなるのか、といった情報が診断の大きな手がかりになります。そして、実際にトイレの状況を確認します。まず耳を澄ませて、音の発生源がどこなのかを探ります。便器のタンク周辺から聞こえるのか、それとも便座自体からなのか、あるいは壁の中や床下から響いてくるのか。この時点で、原因はある程度絞り込めます。次に、タンクの蓋を開けて内部を観察します。水が満水になった後も、給水パイプから水がチョロチョロと流れ続けていないか、水面が静止せずさざ波を立てていないかを確認します。もし水が流れ続けていれば、異音の原因はタンク内部の給水機構、特にボールタップやフロートバルブの不具合である可能性が非常に高いです。この場合、部品の調整やパッキン、あるいは部品一式の交換で解決します。一方で、タンク内に異常が見られないのに音がする場合、私たちは温水洗浄便座を疑います。脱臭機能のスイッチを入れたり切ったりして、音に変化があるかを確認します。また、電源プラグを抜いて音が消えれば、原因は便座本体のモーターやファンで確定です。お客様の中には、トイレの換気扇のモーター音をトイレ本体の異音と勘違いされているケースも意外とあります。トイレの照明スイッチと換気扇が連動している場合、スイッチを切って音が止まれば、それはトイレの故障ではありません。このように、私たちは思い込みを捨て、一つ一つの可能性を潰していくことで、正確な原因を特定します。異音の診断は、パズルのピースを組み立てるような作業なのです。