あれは、寝静まった深夜2時のことでした。どこからか「ブーン…」という低周波のような音が聞こえ、私は目を覚ましました。最初はエアコンか冷蔵庫の音かと思いましたが、どうも違う。音のする方へ耳を澄ますと、それは紛れもなくトイレからでした。ドアを開けると、音はさらに明瞭になり、便器の中から地鳴りのように響いてきます。その不気味さに一瞬恐怖を覚えましたが、このままではうるさくて眠れないと思い、原因究明に乗り出すことにしました。スマートフォンで「トイレ 異音 ブーン」と検索すると、出るわ出るわ、同じ悩みを抱える人々の投稿。どうやらタンクの中で水が止まりきっていないのが原因らしいとあたりをつけました。意を決して、重い陶器のタンクの蓋を開けて中を覗くと、水面がわずかに波立ち、給水管らしき部分からチョロチョロと水が流れ続けているのを発見。これが音の原因か!と確信しました。ひとまず音を止めるため、説明書きに従ってトイレの根元にある止水栓をマイナスドライバーで閉めると、ピタリと音は止みました。訪れた静寂に心から安堵したのを覚えています。翌朝、ホームセンターでタンクの型番に合うボールタップのパッキンを購入し、ネットの動画を見ながら交換作業を行いました。古いパッキンは弾力を失い、変形していました。交換後、恐る恐る止水栓を開けると、給水が満水位置でピタリと止まり、忌まわしい「ブーン」音は完全に消え去りました。あの夜の格闘は、私に小さな達成感と、異変を放置しないことの大切さを教えてくれた貴重な経験となりました。